2011年2月28日月曜日

これって背信になるのか、誰かにきいてみたい「背教者カドフェル―修道士カドフェルシリーズ(20)」エリス ピーターズ

背教者カドフェル 修道士カドフェル20     文社文庫小説としての出来がとてもいいです。しかし、それよりも気になったのは、背教という言葉でした。このシリーズを通じて語られる、正義、そしてシュルズベリーから逃げ延びる登場人物たち、すべてに共通する何が罪なのかという、問いかけが、この巻ではカドフェル自信に問われます。最後は修道院に受け入れられますが、本当にこれでいいのでしょうか?彼は自分が許せるのか、彼の寛容と、正義がよくわからない終わり方。回答はないということなのでしょうが、ある人は十字軍に参加し、ある人は家に帰る。しかし、修道院に帰ろうと、家に帰ろうとつきまとう、背教という概念、とても恐ろしいです。★★★

2011年2月24日木曜日

伝記小説も難しい「魁偉(かいい)なり-広瀬武夫伝」東郷 隆

魁偉(かいい)なり-広瀬武夫伝軍神第1号を小説化ということで、だいぶ悩んだらしく、とうとう半分が編集者との対談になっています。しかも、誰と誰の対談なのかが、あとがきを読まないとわからない。どういう編集しているんでしょうか。取材はきちんとされているし、対談は伝記小説の持つ難しさがよくわかって納得できるんですが、いきなり対談はないだろうと思います。★★

2011年2月22日火曜日

「聖なる泥棒―修道士カドフェルシリーズ(19)」エリス ピーターズ

聖なる泥棒―修道士カドフェル・シリーズ〈19〉 (光文社文庫)カドフェルがすり替えた、聖ウィニフレッドの遺骨が盗難にあいます。久々の推理も、犯人はかなり偶然に見つかってしまい、ちょっとがっかり。しかし、当時の風俗と犯罪が、ちょうどバランスがとれた回でした。★★★

2011年2月21日月曜日

バンド・デシネ本です「氷河期 ―ルーヴル美術館BDプロジェクト―」ニコラ・ド・クレシー

氷河期 ―ルーヴル美術館BDプロジェクト― (ShoPro Books)ルーヴル美術館をテーマにした、バンド・デシネ本です。収蔵された絵画が氷の中から発掘され、とんでもない解釈が。大量の絵画が紹介されます。★★

「スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選」山岸 真/編

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)メンバーが凄いです。グレッグ・イーガン、ロバート・J・ソウヤー、デイヴィッド・ブリン、ブライアン・W・オールディス、イアン・マクドナルド、チャールズ・ストロス 。まだまだ入ってます。これだけでお腹いっぱいです。しかも、ポストヒューマンといえば、価値観SF。これで面白くないわけがありません。★★★★

2011年2月19日土曜日

カドフェルが捕虜に「デーン人の夏―修道士カドフェルシリーズ(18)」エリス ピーターズ

デーン人の夏 (光文社文庫)謎解きがなくなって、歴史小説になりました。デーン人=バイキングが襲来します。おまけにカドフェルが、捕虜になってしまいます。身代金を巡る攻防、たんなる殺人者ではないバイキング。今までとは違うスタイルですが、謎解きより面白いようです。★★★

2011年2月17日木曜日

ようやくでてきた反WEB2.0論「人間はガジェットではない IT革命の変質とヒトの尊厳に関する提言」ジャロン・ラニアー

人間はガジェットではない (ハヤカワ新書juice)エジプト革命でFacebookの友達申請が急増してます。しかし、この本はバーチャルリアリティのGURUが、FacebookやTwitterで個人がどんどん薄まっていき、抑圧されている。WEB2.0は、社会システムとして問題がある。といった論旨に貫かれています。内容は、論理的でもなく、いいかげんな論旨が目立ちますが、ようやくでてきた反WEB2.0論といったところでしょうか。中庸のなかに幸せと、次の落ち着いた世界が成り立って欲しいと思います。★★★

2011年2月16日水曜日

「風水先生「四門の謎」を解く」荒俣 宏

風水先生「四門の謎」を解く東北・対馬・小笠原・沖縄。日本を守る、4つの門。しかも、軍事的防衛を目的とする、遺跡がこんな離れた島にあり、平安時代から20世紀まで使われていたというのは、恐ろしいです。しかし、沖縄の遺跡などが、日本の四門にあたるというのはちょっと現実味にかける気がします。★★★

2011年2月15日火曜日

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)テッド・チャンのヒューゴー賞/ネビュラ賞/星雲賞作、「商人と錬金術師の門」が収録されています。他の作品も1級品ばかり。50周年の厚みです。★★★

2011年2月14日月曜日

翻訳家のエッセイ「厄介な翻訳語―科学用語の迷宮をさまよう」垂水 雄二

厄介な翻訳語―科学用語の迷宮をさまようリチャード・ドーキンスの翻訳でお馴染み、垂水 雄二さんの翻訳家エッセイです。寿司ネタのハマチJapanses amberjack。ハマチだけを指す言葉が英語になかったり。生態学のecologyがなぜ、エコになったのかまで、翻訳家の苦悩が綴られます。なにより、勉強になります。教養の幅が違います。さすがだと思います。★★★★

2011年2月13日日曜日

昭和モダンが堪能できる探偵小説「琉璃玉の耳輪」津原泰水

琉璃玉の耳輪原作が、女性作家、尾崎翠(おさき みどり)の未完成のシナリオ、それを遺族の許可を受け小説化したという作品です。尾崎 翠といえば、少女漫画のような世界観の小説家。かなりグロイです。熱海のホテル、伯爵子息、旅芸人の一座、モダンガールの女性探偵、浅草を仕切る仕立屋銀次、美貌の三人姉妹、ホテルの屋上には脱出用の巨大アドバルーン、そしてロールスロイス・シルバーゴースト、横浜阿片窟。オールスターキャストで贈る探偵小説です。★★★


2011年2月12日土曜日

イヒヒと笑えます「絲的炊事記―豚キムチにジンクスはあるのか」絲山秋子

絲的炊事記 豚キムチにジンクスはあるのか (講談社文庫)芥川賞受賞作家絲山秋子さんが、雑誌Hanakoに連載した、一人暮らし炊事エッセイです。ぼくも、一人暮らし、食事は自分で作る、家で一人の時はお酒は飲まない派なので、読むと身に染みます。食材を買うと、食材を捨てたくないので、同じ食材で違う味、違う料理に挑戦。挑戦中、足りない食材や、量がひとり分なので、アイデアで適当なことをやって惨敗したり、とてつもなく当たりで嬉しくなったり。もらった変わった食材、調味料で我が家風料理を作ってみたり。量が多すぎて、それでも残せなくて腹いっぱい。今日は、雪で外出もしないで、ホタテ缶を3缶もあけて、炊き込みご飯、摺り下ろし大根ホタテスープ。ご飯は正解、スープは、お酒が欲しくなります。でも我慢我慢。★★★★

2011年2月9日水曜日

原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー 大森望/日下三蔵/山田正紀 編

原色の想像力 (創元SF短編賞アンソロジー) (創元SF文庫)新人ばかりを集めたSF短篇集です。作品は、それなりに高度。オモシロし、値段にも見合っているけど、SF入門書と書いてあるのは、やりすぎ。実験的で概念的、今の現代文学のほうがよほどSFしてます。読んで楽し作品はなく、頑張って読まなければいけない作品ばかり。体力いります。★★

2011年2月2日水曜日

「陶工の畑―修道士カドフェルシリーズ(17)」エリス ピーターズ

陶工の畑—修道士カドフェル・シリーズ〈17〉魂の罪なのか、俗世の犯罪なのか。結果は、非常に現代的なものであり、テーマがミステリーではなく、そうした社会問題になった回です。ミステリーではなくなって、歴史ものでさへないほどの現代的な問題を扱う必要があったのか疑問ですが、日本の人情時代劇のようになってきました。★★